BLOG

データフィードは「広告の素材」から「AIの判断材料」へ──エージェンティックコマース時代に変わる商品データの役割

「来週末のキャンプ用に、1万円以内で焚き火に強いジャケットを買っておいて。支払いはいつものカードで」 ―こんな指示をAIに伝えるだけで、商品の探索から比較、購入・決済までをAIが代行する。そんな購買のかたちが「エージェンティックコマース(Agentic Commerce)」です。

海外ではすでに実装が進み、日本市場でも今後のECを左右するトレンドとして注目を集めていますが、この変化のなかで、EC・広告運用の現場が見落としがちな論点があります。それは、データフィードの「役割」そのものが変わりつつあるということです。

これまでデータフィードは、広告クリエイティブを自動生成するための「素材」でした。しかしエージェンティックコマースの世界では、データフィードはAIが商品を理解し、比較し、選ぶための「判断材料」へと立ち位置を変えます。本記事では、この役割の転換を軸に、運用担当者が今おさえるべきポイントを整理します。
※本記事は、別記事「ChatGPT・AI広告時代に重要になる「データフィード」とは?」の続編にあたります

エージェンティックコマースとは何か──「検索」から「委任」へ

エージェンティックコマースとは、AIエージェントが消費者に代わって商品の探索・比較・購入を自律的に行う、次世代のEC形態です。従来のECが「ユーザー自ら検索して選ぶ」スタイルだったのに対し、AIがユーザーの好みや状況を読み取り、最適な選択肢を提示・購入する「代行型」へと進化していく可能性が広がっています。

決済プラットフォームのStripeは、AIエージェントによる購入代行を「agent-initiated payments(エージェント主導の決済)」として位置づけています。従来のAIが商品を「勧める」存在だったのに対し、今後は商品の探索や比較だけでなく、購入プロセスそのものを担っていく未来が近づいています。

また、野村総合研究所(NRI)も、利用者の意図を委任されたAIエージェントが、商品の比較や交渉、購買・決済手続きまでを代行する「自律型コマース」の広がりを指摘しています。購買行動の出発点が、ユーザー自身による検索や比較から、AIへの委任へと一部移行していくと予想されます。


すでに動き始めている実装

OpenAIは2025年9月、ChatGPTの会話内で購入を完結させる「Instant Checkout(インスタント・チェックアウト)」と、販売者側とのシステム連携仕様である「Agentic Commerce Protocol(ACP)」を公表しました。

ShopifyはOpenAI・Google・Microsoft Copilotと連携し、ChatGPT上で加盟店の商品を発見できる基盤を構築。GoogleとはUCP(Universal Commerce Protocol)を共同開発し、Walmartやtarget、Etsyといった大手も参加するエコシステムが広がっています。

外資系コンサルファームの市場予測も活発で、マッキンゼーは2030年までにこの市場が世界で大きな規模に達すると見込み、ベイン・アンド・カンパニーは米国EC売上の約25%をAI経由が占めるようになると推定しています。


データフィードの「役割」の転換期

広告とエージェンティックコマースは、どちらも「データフィードが起点」という点で共通しています。しかし、フィードに求められる役割はそれぞれ異なります。

これまで:これまでのダイナミック広告では"フィードは「人に見せる広告」の素材"でした。データフィードに登録したタイトル・説明文・価格・画像を、広告エンジンが最適な組み合わせで「人が見るクリエイティブ」に変換していたため、フィードの良し悪しは、最終的に人間の目に触れるバナーの訴求力に表れる。だからこそ「重要な情報は文頭に」「魅力的な商品名を」といった、人間の認知を意識した最適化が中心となっていました。

これから:エージェンティックコマースでは、"フィードは「AIが読む判断材料」になる"というのが、これまでとの大きな相違点です。AIエージェントは、商品ページの美しいデザインやブランドイメージ写真を「見て」判断しているわけではありません。素材・サイズ・重量・用途・互換性といった構造化された属性データを「読んで」判断します。

Salesforceは、AI時代には「人だけでなくAIにも理解される商品情報やコンテンツ」を整備することが重要だとしています。AIエージェントは、商品ページのデザインやキャッチコピーだけでなく、商品属性や価格、在庫などの構造化された情報も踏まえて候補を比較・推薦します。そのため、従来の広告的な訴求に加え、AIが処理しやすいデータ設計の重要性が高まると考えられます。

つまり、評価軸が「魅力的か」から「処理可能な構造化データか(機械可読性)」へと移る。この「主体の交代」こそが、これまでの広告との最大の違いです。

しかし、重要なのは人に見せる役割が完全になくなるわけではないということです。

最終的に商品を使うのは人間であり、商品ページやブランド体験の重要性は今後も変わりません。一方で、AIが候補商品を絞り込んだり比較したりする場面が増えることで、「人に伝わる表現」に加えて「AIが理解しやすい構造化された情報」も同じくらい重要になっていくと考えられます。


なぜ「データフィードを持っている」だけではAI時代に対応できないのか

多くのEC事業者は、すでに広告配信用のデータフィードを保有しています。しかし、AIが商品を理解し、比較・推薦する場面が増えていくなかでは、「データフィードを持っている」だけでは十分とは言えません。重要なのは、AIが活用しやすい品質・鮮度・構造を備えたデータになっているかどうかです。

ここでは、AI時代に見直したい3つのポイントを紹介します。

1. AIが活用しやすい商品データには、より多くの属性情報が求められる

AIを活用したコマースでは、商品を比較・推薦するために、構造化された属性情報や一貫したデータ形式、鮮度の高い商品情報がこれまで以上に重要になると考えられています。

例えば、Google Merchant Centerには数百の属性フィールドが用意されていますが、実際には必須項目のみを入力して運用しているケースも少なくありません。

素材や重量、サイズ、配送情報、規制関連情報などの属性が不足していると、AIが商品を十分に理解できず、推薦候補として適切に評価されにくくなる可能性があります。

2. AIは対話のなかで商品情報を繰り返し参照する

AIエージェントは、ユーザーとの対話のなかで価格や在庫、配送条件、購入資格(年齢制限や地域制限など)といった情報を組み合わせながら、候補商品を絞り込んでいきます。

そのため、価格や在庫情報の更新が遅れていると、ユーザーに古い情報を提示してしまう可能性があります。AIを活用したコマースが広がるほど、データの鮮度を維持する重要性はさらに高まっていくと考えられます。

3. 在庫や価格の不整合はユーザー体験に直結する

ここが従来の広告との大きな違いです。

例えば、AIが「在庫あり」と判断して購入手続きを進めたにもかかわらず、実際には欠品していた場合、ユーザーは期待した商品を購入できません。

広告ではクリック機会の損失にとどまるケースでも、AIが購入プロセスまで担う世界では、こうした情報の不整合がユーザー体験やサービスへの信頼に影響する可能性があります。

このように、AI時代に求められるデータフィードは、「広告を表示するための最低限の情報」ではなく、「AIが商品を理解し、比較し、推薦できる情報」であることが重要になります。


運用担当者が今おさえるべきポイント

役割の変化を踏まえると、これからのデータフィードでは「広告に配信できる状態」を目指すだけでなく、「AIが商品を正しく理解・比較できる状態」を意識した運用が重要になります。

1.属性情報をできるだけ充実させる:AIは、自由記述の説明文だけでなく、素材・サイズ・重量・用途・互換性・配送情報・返品ポリシーといった構造化された属性情報をもとに商品を理解します。
そのため、必須項目だけで運用するのではなく、購買判断に関わる属性はできる限り入力し、商品情報を今まで以上に充実させることが重要です。

2.商品情報の鮮度を維持する:価格や在庫情報は、ユーザー体験に直結する重要なデータです。在庫管理システムやECプラットフォームとデータフィードを適切に連携し、価格や在庫ができるだけ速やかに反映される仕組みを整えましょう。
AIを活用したコマースが広がるほど、情報の鮮度はより重要な要素になると考えられます。

3.SSOT(信頼できる唯一の情報源)を確立する:価格・在庫・購入制限などの情報について、どのシステムを参照しても同じ内容が返る状態を整えることも重要です。PIM、OMS、在庫管理システム、ECプラットフォーム、データフィードなどで情報が分散していると、不整合や更新漏れが発生しやすくなります。
AI時代には、部門をまたいで情報の一貫性を保つ仕組みづくりが求められます。

4.「選ばれる理由」を言語化する:AIによる商品推薦が広がるにつれて、スペック情報だけでは商品の違いを十分に伝えられない場面も増えていくと考えられます。例えば同じ「焚き火キャンプ向けジャケット」でも、

  • 秋冬キャンプ向け
  • 火の粉に強い難燃素材
  • 1万円以下
  • 初心者向け
  • ファミリーキャンプにおすすめ

といった利用シーンや対象ユーザーまで整理されていると、AIがユーザーの要望と商品を結び付けやすくなります。
「誰のための商品なのか」「どのような場面で役立つのか」「なぜこの商品を選ぶ価値があるのか」といった情報を丁寧に整理しておくことが、AI時代の商品データではこれまで以上に重要になると考えられます。


まとめ

これまでデータフィードは、広告クリエイティブを生成したり、商品情報を広告媒体へ連携したりするための「広告の素材」として活用されてきました。
一方、エージェンティックコマースの広がりによって、データフィードはAIが商品を理解し、比較し、ユーザーに推薦するための「判断材料」としての役割も担うようになりつつあります

もちろん、人に伝わる魅力的な商品ページやブランド体験の重要性がなくなるわけではありません。しかし、AIが購買プロセスに介在する場面が増えるにつれて、「魅力的な表現」に加えて、「AIが理解しやすい商品データ」を整備することも、これまで以上に重要になっていくと考えられます。
そのためには、商品属性を充実させること、価格や在庫などの情報を最新の状態に保つこと、そして複数のシステム間で一貫した商品データを維持することが欠かせません。

AIを活用したコマースは、まだ発展途上の領域です。だからこそ、どのAIプラットフォームが主流になるかを予測するよりも先に、「AIが活用しやすいデータフィード」を整備しておくことが重要です。

※本記事は2026年6月時点の公開情報をもとに作成しています。エージェンティックコマース関連のプロトコルや各AIプラットフォームの仕様は変化が速く、半年〜1年単位で大きく変わる可能性があります。最新情報は各社の公式発表をご確認ください。


データフィードサービス「FEED STREAM」を運用するメディアストリーム株式会社では、Googleショッピング広告やMeta広告、Criteo広告に必要なデータフィードの作成から広告運用まで一気通貫で対応しています!
もちろん、「データフィードのみ」「広告運用のみ」のご相談も可能。質問だけでも構いませんのでお気軽にお問い合わせください。

記事をシェアする:

FEED STREAMで、データフィードのあらゆる悩みを解決しましょう。

すぐ導入の予定がない、まずお悩みを相談したい等の場合も、お気軽にお問い合わせください。